映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

中島京子

長いお別れ (中島京子)

中島京子の「長いお別れ」を読んだ。 アルツハイマー型認知症を発症した父親が人生を閉じるまでの10年間を綴った物語で、父親を支える家族の物語だった。と言っても、病気に焦点が当たっている感じはなく、オムツや排泄物が登場しても、家族の大変さが悲愴感…

さようなら、コタツ (中島京子)

面白いタイトルだなと思っていた。 2003年にデビューした作家で、この短編集の作品のほとんどが2004年初出となっているから、かなり初期の頃の作品だ。 最初に短い前書きがついていて、短編集だろうと長編だろうと、物語のプロローグとしてではなく、小説に…

イトウの恋 (中島京子)

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); なんだか不思議な物語だった。 伊藤亀吉という人の、特別な人生が語られているようでいて、読み終えたときは、誰もがイトウであるような、誰もがイトウの娘であるような、誰もがイトウの娘の娘であり、…

均ちゃんの失踪 (中島京子)

失踪した均ちゃんの家に泥棒が入った、という状況から始まる表題作を筆頭に、「のれそれ」「彼と終わりにするならば」「お祭りまで」「出発ロビー」と四つの短編が続くのだが、登場人物と時間の流れを共有していて、全体で一つの作品になっている。 最初から…

女中譚 (中島京子)

「ヒモの手紙」「すみの話」「文士のはなし」の三つの短編が収められた本で、どれも、すみという名のばあさんの語りであり、そのばあさんの若いころの話だった。満州事変、戒厳令、戦争、昭和、といった言葉が当たり前のように出てきて、そう遠くないように…