映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

寝ずの番 (中島らも)

 中島らもの短編集「寝ずの番」を読んだ。
 最初に「寝ずの番」が1から3まで、三部作で登場するのだけれど、咄家の話で、「1」で師匠が死に、「2」で兄弟子が死に「3」で師匠の奥さんが死んだという話だったので、近しい人がそんなにポンポン亡くなるなんてことは、現実にはそうないだろうと、フィクションのつもりで読んでいたら、どうやら実話に基づく話だったようでそこは驚いた。他の収録作品にも、作者を含め、実在の人物が実名のまま登場するものあがり、実生活が作品に盛り込まれていたり、題材となっていることは十分感じられるのだが、それでも読む側には「小説」という体裁で伝わってくることが、不思議と言えば不思議だ。
 文庫の背表紙に「ちょっとHで、笑撃的ならもワールドを満喫できる短編集」といったような文句があったが、本当にその通りで、娯楽として大いに楽しめる本だった。
 会社員も経験し、劇作家、小説家、随筆家、ミュージシャン、俳優、と様々な顔をもち、アル中や躁鬱病とも共に生きた作者本人の人生と同じように、作品も相当に多様なものが書かれたのではないかと想像する。次にこの作家の本を手に取るときが楽しみだ。

 
寝ずの番