映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

東京タワー / オカンとボクと、時々オトン (リリー・フランキー)

 2005年初版のリリー・フランキー作「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」を読んだ。
 筆者が自分の体験を振り返って書いたという小説で、具体的な出来事を通して、お母さんへの想いはもちろん、リリーさんの中の広大な宇宙が見事に描かれていたように思う。
 お母さんの人生を見つめることで、いろいろなことを掘り下げていた。
 「親子」「家族」「夫婦」「世間」「貧しさ」「自由」「仕事」「時代」「人生」「幸福」これら全てのことの捉え方が冷静で慎ましく誠実な印象で、心に沁みる文章がたくさんあった。
 誰だって起こってしまったことはなかったことにできない。失恋も就職も結婚も病気も。人生は意志でコントロールできるものではない。人はそもそも自分の意志で生まれてきてはいない。生まれる国も時代も選んだわけではない。与えられた人生をどう受け止めるか、なのだろう。生き方というのは、自分の人生の受け止め方なのかもしれない。
 本を読んでいて、これは覚えておきたいと思う表現や文章に出会うと、書き留めておくこともあるのだけれど、この本から書き抜いていたらB5判のノートを5ぺージも使っていた。その中から特に好きな言葉をここに残しておく。
「東京でも田舎でも、どこでも一緒よ。結局は誰と一緒におるのか、それが大切なことやけん。」
 

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~
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