映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

友だちのパパが好き

 2015年公開の山内ケンジ監督作品「友だちのパパが好き」を観た。 
 様々な感じ方ができそうな、様々な側面を持つた映画だった。 
 正直さ、素直さと捉えるか、自分勝手と捉えるか、非常識と見るか自由と見るか、純愛なのか狂気なのか、どれもが紙一重、というより、とれにも境界などなく、どれもが相容れるものなのだろう。
 昔から「自己主張するべきだ」というような言葉を聞くと、こちらは自己主張のつもりでも、相手によってはわがままと思われるのではないかと考えたものだった。どこまでが自己主張でどこからがわがままかという線引きは、やはり人それぞれの考え方や立場によって変わってくるのだろう。公正や公平といったことも、結局は人の判断によるものなら、何だか頼りない気もしてくる、などと言っては極端だろうか。
 映画に話を戻すと、娘の友人に猛アタックされ、その勢いにのみ込まれるようにして妻だけでなく愛人にも背を向け、娘と同い年の女性に走る父親は、いかにも身勝手な男に映るのだけれど、最後は事件が起きて、父親と若い女性の二人が一命をとりとめたところで終わってしまう。二人が、相手も助かったことを知って喜び合っているような場面で終わるのだが、果たして10年後20年後も、この二人は仲良く暮らしているのだろうかと考えると、何か浅はかさのようなものを見せられた気がした。とはいえ、それが人の浅はかさなのか、恋愛の、なのか、もっと別の何かのなのか、判然とはしない。
 個人的には、妻だけでなく、妊娠を告げた愛人もかなり気の毒に思えたが、だからといって愛人に感情移入するほどでもなく、終始俯瞰するような感じで鑑賞していた。映画にはそういう味わい方もあるのだなと思った。

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