映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

ダージリン急行

 2008年に日本公開のアメリカ映画「ダージリン急行」を観た。
 ツタヤで手に取ったとき、DVDのジャケットに、~三兄弟がインドを旅する~ とあったので、一瞬インド映画かと思ったけれど、インドが舞台のアメリカ映画だった。
 疎遠になっていた三兄弟が、長男の呼びかけにより遠くで暮らす母親を訪ねる旅に出る、というのが粗筋といえば粗筋なのだけれど、「母親を訪ねる旅」という文言から予想されがちな郷愁のようなものは、ほとんど感じられなかった。多分、郷愁や家族のしがらみや絆のようなものは、くすりと笑える場面に変えられていて、そがとても良かったように思う。
 三兄弟それぞれの個性がぶつかり合い、ぶつかりっぱなしでも兄弟だから許せたり、許せなくても旅が続いたり、結局許すも許さないもなかったり、目の前で起こるハプニングには三人で対応していたりする。そのことが妙に楽しく気持ちのいい映画だった。
 そして、親子や兄弟であっても、自分以外の誰かの人生に深く関われる時間は、そう長くはないのだと気づかされた。親子も兄弟も、それぞれに生活があれば、運命共同体ではなくなる。そういう意味では夫婦とか共同経営者とかの方が運命共同体に近く、そうした相手がいるというのは、自分の中の宇宙が二倍にも三倍にも広がることなのかもしれない。運命を、たとえ一部であっても共有する以上、その相手をある程度、或いは丸ごと受け入れなければならないだろうし、自分以外の誰かを受け入れるということは、自分の世界が広がるということなのだろうから。