映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

オー!ファーザー

 2014年公開の映画「オー!ファーザー」を観た。原作は伊坂幸太郎、監督、藤井道人、主演、岡田将生
 DVDのジャケットを読んで、父親が4人いる高校生が主人公と知り、面白そうだなと思って
借りてきた。
 普段はサスペンスやミステリーより、家族や人生を描いたようなドラマかコメディを選ぶのだけれど、今回はなんとなくストーリー展開を楽しめそうなものを求めていて、主人公に父親が4人いるという滅多にない設定と、「事件に巻き込まれていく」という紹介文に引かれたのだった。
 父親が4人いて、全員と同居しているなんて、一体どんなドタバタ劇かと思いきや、仕事やその他でいつも不在の母親に代わり、4人の父親たちが抜群のチームワークで一人息子を温かく見守りながら、その生活を支える様子はとても穏やかなものだった。町の黒幕が登場したり、人が死んだり、監禁されたり、事件は確かに起こって主人公もその中心に引き込まれていくし、事件そのものがつまらなかったわけではないのだけれど、事件の真相や解決への興味以上に、父親と息子の関係性に注目して見ていた気がする。(結局、そういう方向から映画をみるのが私の習性なのだろう)
  4人の父親がいて、そのうちの誰か一人とは血が繋がっているなら、それが誰なのか知りたくはないのだろうか、と最初は不思議に思った。でも産まれたときから4人の父親に囲まれて育ち、それが当然の暮らしなら、ある日突然、血が繋がっている父親は一人だけだと言われても、その方がピンと来ないのかもしれない。小さな子どもにとっては自分の生活が世界のすべてだ。父親の4人いる生活を「ずっとそれが普通だった」と、主人公が口にする場面があったのも無理はない。よく思うのだけれど、人の数だけ「普通」がある。
 そして、家族に対して他人には持たない特別な感情を持つのが普通だとしたら、それは血の繋がりのせいばかりではなく、良くも悪くも共に過ごした時間によるのかもしれない、と思ったりした。