1997年のイラン映画「運動靴と赤い金魚」を観た。
ツタヤでどれを観ようかとDVDをランダムに手に取っては棚に戻していたとき、ふと見ると、ジャケットに「隠れた名作」とあり、気になって借りてきた。イラン映画は初めてで、その意味での好奇心もあったように思う。
描かれているのは一般庶民の生活で、主人公は子どもたちだった。兄が一足しかない妹の靴をなくしてしまい、これも一足しかない兄のボロボロの運動靴を二人で交代で使うことになる。親に言えば叱られると考え、このことは兄妹二人の秘密だ。その後、なくした靴が別の誰かに履かれていることを知ったときも、賞品の靴を狙って兄がマラソン大会に出たときも、それらのことは兄妹二人の秘密となる。靴をなくしたこと以外は、秘密にしようと約束したわけではないけれど、秘密を共有することが、この兄妹にとっては支え合うことになっていた気がする。世間一般に置き換えて考えると、秘密の内容によっては共有することで支え合うのではなく、足の引っ張り合いとか、何か良くないことを引き起こす場合もありそうで、世の中のすべての秘密が、人と人を温かくつなぐものならいいのに、と思ったりもする。子どもじみた発言かもしれないけれど、大人も子どもも心は自由なはずで、心の中では何を願ってもいいに違いない。
この映画の最後に出てくる赤い金魚や、兄妹が息を吹きかけて飛ばすシャボン玉は、見ていると、そこにずっといてほしい、あってほしいと思えるものだった。そして、ただそこにいるだけでいい、あるだけでいい、と思える人や物の存在が、生活を、もっと言えば人生を、豊かにするのだろうと感じた。
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
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