映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

三度目の殺人

 2017年公開の是枝裕和監督作品、「三度目の殺人」を観た。
 タイトルに「殺人」とあるように、殺人事件を中心とした話で、是枝監督の他の作品とは少し毛色が違うと言えば言えそうにも思う。
 けれどある意味では「そして父になる」や「海よりもまだ深く」に描かれていたもの、それらの作品を通して伝わってきた何かと同様のものを、鑑賞後には感じとっていた気がする。おそらくそれは、事実、現実、真実といった言葉のどれにも当てはまらない人間の心情、なのではないかと思う。
 人は本当に一人一人違って、稀には「こんな人がいたのか」と目を見開きたくなるような相手もいるに違いない。自分とすっかり同じ価値観の相手など見つかるものではないのだろうけれど、それでも共感や共有や共存を望んで、それを可能にしてくれる誰かを、知らず知らず追い求めるのが人間なのかもしれない。
 もちろん、人は一人一人違って、いろいろな人間がいるのだから、そんなものを追い求めない人がいたっておかしくないのだけれど。