映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

団欒 (乃南アサ)

 乃南アサ著の短編集「団欒」を読んだ。
 面白かった。
 いろいろな家族がいて、家族ごとにいろいろな事件が起こる。故意の殺人や不慮の殺人も起こるのだが、それに関わる人々の言動がいかにも人間臭く、あり得ないと思えるほど身勝手な家族もいて、所詮人間なんて勝手な生き物、誰だって自分が一番大切なのだということを、痛切に、というよりは痛快に感じさせてくれるような楽しい作品だった。
 人は本当に皆それぞれで、人の数だけ「普通」があり人の数だけ「常識」がある、と常日頃思っているけれど、家族という単位にもそれは当てはまりそうだ。外の人には理解されない習慣や価値観も家族の中では当たり前にまかり通っていて、外の人には理解されないのだということに気づきもしなかったりする。ならば、家族同士の価値観は似通っていて、容易にわかりあえるかというと、そう単純な話でもなさそうだ。おそらくは家族だからこそ「期待」という名の甘えが生じやすいのかもしれない。


団欒(新潮文庫)

団欒(新潮文庫)