川上弘美の短編集「神様」を文庫本で読んだ。
何年も前に、作家の保坂和志氏が「川上弘美の真鶴を読め」と、どこかで発言していたのを見て、真鶴をはじめ、彼女の作品ばかりをある時期読み続けたことがある。何作読んだかは覚えていないけれど、「神様」は今回初めて手に取った。
久しぶりの川上作品だったが、独特の世界観というか作風というのか、彼女の紡ぐお話の中に、安心して心地よく身を任せることができた。読み終えたときは、なぜだか「かなわんなぁ」という感想がひとりでに漏れ、上から目線とも取れるような言葉に自分で驚きつつ、なんだか笑ってしまった。何がどうかなわないのかなどということは言語化できず、ただ紛れもなく素直な感想だったのだ。
あとがきを読んで、「神様」がデビュー作だったと知った。川上弘美は最初から川上弘美だったのだ、と言えば、これもまたエラソーな感想だろうか。
手元に置いて、何度でも読みたい本である。