映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

ボクたちの交換日記

 監督・脚本、内村光良の2013年公開の邦画「ボクたちの交換日記」を観た。原作は、放送作家鈴木おさむの小説「芸人交換日記 ~イエローハーツの物語~」 
 コンビのお笑い芸人を目指していた高校生の主人公ふたりが、いつしかそれぞれの道で、それぞれの生活を持つようになり、長い年月を経て再会するまでを描いていた。
 コンビでお笑いをやりたいのに、二人のうちの一人だけが才能を認められ、もう一人はその道を諦めるという展開の中で、二人の友情と仕事への向き合い方(つまりは自分自身への向き合い方)が示されていて、思い通りにならないことにどう対処するかで、人の生き方は決まるのだと感じた。と言うと、対処するまで生き方は決まっていなくて、どうするかを選んだ時点で生き方が決まっていくように聞こえるかもしれないけれど、案外その逆で、その人がその人である以上、選ぶ道というのは既に決まっていて(少なくとも大筋においては決まっていて)、何かの選択をする度にその人の生き方が浮き彫りになっていくのではないか、という気がした。運命論のように聞こえるだろうか。私がこんなふうに感じたのは、以前、作家の保坂和志という人が、次のようなことを何かに書いていたのを読んだからかもしれない。

「人は、自分で選んで生きているつもりでも、選んでいるのはほんの表面的な部分でしかない。こうもできるああもできると思っていても、実際にはこうとしかできないものだ。」

 保坂氏が述べていたこのことを、この映画が具現化しているように私の目には映ったのだと思う。
 自分という人間が一人しかいない以上、最終的に選べるのは一つの道だけだ。ああもできたしこうもできたのに、と悔やむのは自分への言い訳であり甘えなのだろう。 
 私はこの映画のラストシーンが好きだ。どうということもなく交わされる、主人公ふたりの二言三言のやり取りに、長い年月にさえ収まりきらなかった二人のえも言われぬ思いが溢れでていたように思えてならない。

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  • 発売日: 2013/08/21
  • メディア: DVD