映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

望み

2020年公開の堤幸彦監督作品「望み」を観た。
  
 犯罪がストーリーの軸になっている映画はたくさんあり、これまでにいくつか観てきたが、大抵の場合、犯人は誰なのか、犯行はどう展開したか、という点に興味が集中するように思う。或いは、犯罪の意味や動機について考えさせられることもあるけれど、この映画のようなベクトルで観る者を引き付ける作品は、私は初めてだった。
 犯罪を中心に置きながら、この映画のテーマは全く別のところにあり、しかも多角的で奥深いものに思えた。 
 親が子を思う気持ちや夫婦の在り方に正解などなく、誰もが自分なりの答えを自分の正解として掲げるよりほかないのだと示されたような気がする。そして人の感情は、道徳や倫理の枠の中にあろうとなかろうと、そもそも範囲が不確定なその枠に収まっているかどうかが問題なのではなく、その感情にどう向き合うかが、本人にとっても周囲にとっても一番大切な点なのだろう。感情は自分と一体化している場面が多く、その時間が長いと、向き合うという認識を持つことさえ難しいのかもしれないが。