映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

2018-01-01から1年間の記事一覧

墨東綺譚 (永井荷風)

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 明治から大正、昭和と活躍した名のある作家なので、一度読んでみたいと思って借りてきたのたが、文体、というのだろうか、言葉遣いというか言い回しというか、最後の方は漢文の引用もあって、私にとって…

八日目の蝉

井上真央と永作博美のダブル主演、と言っていいのだろうか、「八日目の蝉」を観た。 観ている間中、そして見終わってからもしばらくは、いろいろな思いが胸の中で交錯するような映画だった。 主人公は犯罪者になってしまったけれど、決して悪人ではないでは…

イトウの恋 (中島京子)

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); なんだか不思議な物語だった。 伊藤亀吉という人の、特別な人生が語られているようでいて、読み終えたときは、誰もがイトウであるような、誰もがイトウの娘であるような、誰もがイトウの娘の娘であり、…

ミックス

新垣結衣と瑛太が共演した「ミックス」を観た。爽快な映画だった。 ストーリー展開としてはオーソドックスで、先が読めてしまうような感じもあったが、弱かった者が努力によって強さを手に入れたり、寂れていた場所が活気を取り戻したりする姿は、見ている側…

家守綺譚 (梨木香歩)

数年前に一度読み、簡単に言うと「最高」と感じた記憶がある。小説なのだろうけれど、おとぎ話のようなファンタジーのような、それでいて現実的な手触りのある不思議な、でも読んでいると妙に落ち着いた、温かい心持ちになる本だ。 この本の中の好きなフレー…

闇金ウシジマくん

ツタヤの「おすすめ」の棚にあるのを見て、以前誰かが「面白いよ」と言っていたのを思い出して借りたのだが、率直な感想としては怖かった。 世の中には、こういった側面があるのだと思うと、ただただ恐ろしい。 生きていく上でお金は絶対に必要だか、それは…

3月のライオン

大友啓史監督、神木隆之助主演の「3月のライオン」を観た。 いい映画だった。2日間に渡り、前編・後編と観た。どちらも2時間以上で長かったけれど、もっと観ていたかった。 孤独を描くことで、人はひとりではないことを伝えているような映画だった。プロ棋…

聖の青春

若くして亡くなったプロ棋士の生涯を描いたノンフィクション小説を映画化した作品だった。 羽生義治と互角に渡りうほどの才能の持ち主で、10代の頃から頭角を表し、メキメキと力をつける彼だが、幼いころから難病を抱えていた上に膀胱癌を発病してしまう。手…

ことり (小川洋子)

ことりとその歌声を愛してやまない兄弟の物語だった。 兄は10歳のときに、弟以外の誰にも理解できない言葉しか話さなくなる。そして、両親が亡くなったあとは、兄が52歳で亡くなるまで兄弟二人きりで暮らすのだが、慎ましく内向的な生活の中で、小鳥の存在だ…

追憶

2017年公開の降旗康男監督作品「追憶」を観た。 孤児、暴力、殺人、隠蔽、別離。最初からずっと、うしろめたさに覆われたような空気が漂っていたけれど、人が人を思う気持ちが物語の奥底に流れていた。そしてその気持ちが明るく幸せな時間を生み出すわけでは…

りんごの花咲くころ (石坂洋次郎)

本棚の片隅にひっそりと収まっていた本を読んでみた。 初版は、昭和50年12月30日 そして、昭和54年9月20日 7版発行、とある。 おそらく30年以上前に購入した文庫本だるう。タイトルに見覚えはなく、自分で買ったのかどうか判然としないが、忘れているだけで…

怒り

2016年公開の李相日監督作品、「怒り」を観た。 後半は、終わりに近づけば近づくほど、誰が犯人なのかばかり気になって、こいつだろう、いややっぱりこっちか、まさかあいつなのか、と犯人探しに翻弄されてしまい、愛する人を信じられるか、とか、愛した人が…

殯の森

公開されてから、もう10年以上もたっていたとは思わなかった。 ストーリーの流れのようなものはあまり感じられず、ただ、死と生がそこにある、という印象だった。タイトルに「森」が入っているが、本当に森の中をさ迷う場面があり、というか、その場面がこの…

均ちゃんの失踪 (中島京子)

失踪した均ちゃんの家に泥棒が入った、という状況から始まる表題作を筆頭に、「のれそれ」「彼と終わりにするならば」「お祭りまで」「出発ロビー」と四つの短編が続くのだが、登場人物と時間の流れを共有していて、全体で一つの作品になっている。 最初から…

東京ウィンドオーケストラ

坂下雄一郎監督の映画「東京ウィンドオーケストラ」を観た。 あらすじを読んで、ドタバタのコメディを期待していたけれど、ドタバタ劇というほど忙しい感じはなく、どちらかというと呑気な雰囲気さえ漂っていたように思うが、それは舞台となった屋久島の、雄…

女中譚 (中島京子)

「ヒモの手紙」「すみの話」「文士のはなし」の三つの短編が収められた本で、どれも、すみという名のばあさんの語りであり、そのばあさんの若いころの話だった。満州事変、戒厳令、戦争、昭和、といった言葉が当たり前のように出てきて、そう遠くないように…

ふくわらい (西加奈子)

数年前から気になっていた作家で、芥川賞に輝いた作品を含め、著作はたくさんあるのだが、巡り合わせでこの「ふくわらい」を最初に読むことになった。 芥川賞作家はその年の話題になるので、姿を目にする機会もあり、その容貌や作品のタイトルから、無意識の…

本能寺ホテル

綾瀬はるか主演の「本能寺ホテル」を観た。 現代人が何かの弾みで遠い昔にタイムスリップする、という映画や物語が、その時代や場所を変えていろいろ作られているのは、時の流れを止めたり、遡ることができたから、と夢見る人が多いからなのだろう。 どんな…

嫁をやめる日 (垣谷美雨)

図書館で見かけて思わず手に取った。 初めて名前を見る作家だったが、タイトルに限りない親近感を覚え、これは読まなければと思ったのだ。 嫁姑の確執が描かれているのか、モラハラ夫が出てくるのか、それとも予想もしない展開なのかと、親近感の裏側で怖い…

ミリオンダラーベイビー

2004年のクリント・イーストウッドの作品「ミリオンダラーベイビー」を観ました。タイトルにどこか聞き覚えがあるような気がするたけで、あらすじも何も知らなかった私は、なぜか明るく派手な感じの映画を予想していたので、終わりが近づくにつれ予想外の展…

深夜食堂

人々の日常を淡々と描いたような、サラッとした映画をみたいと思い(サラッとした日常、という意味ではないのてすが)、ツタヤの中をうろうろしていて最後に棚に戻さず借りてきたのが「深夜食堂」でした。 私自身、深夜という時間帯をとても愛しているせいもあ…

ツバキ文具店 (小川糸)

この本は、友人が大好きな本だと言って紹介してくれたので、ぜひ読んでみたいと思っていた本てす。世の中の情報に疎い私は、NHKでドラマ化されたことも知らずにいましたが、やはり相当話題になった本のようで、図書館で予約したときはかなりの人数が順番待ち…

湯を沸かすほどの熱い愛

宮沢りえ主演の「湯を沸かすほどの熱い愛」を観ました。観てから3か月ほどがたつのですが、しばらくは感想を言葉にするのを避けたいような、観たものをそのまま自分の中に留めておきたいような、そんな感覚がありました。その感覚は今も薄れていませんが、こ…

被写体の幸福 (温又柔)

確か2日前だと思う、NHKの「朗読の時間」にまた出会えた。読まれたのは、おんゆうじゅう作(温又柔と書くことを後で知った)「被写体の幸福」だった。台湾人の女の子が主人公で、幼い頃の祖父との関わりと、成長して日本に留学してからのこととが描かれていて…

沈黙博物館(小川洋子)

今考えてみると、この作家の作品には、舞台が一体どこなのか、はっきりとは判らないものが多かったように思う。 この「沈黙博物館」もそうだった。どこかの村ではあるのだが、日本なのか外国なのか、どちらでもあるようでどちらでもないような、不思議な空間…

間宮兄弟 (江國香織)

この作家は短編集を何冊か読んだことがあったが、長編は初めてだったかもしれない。短編から受けたイメージとして、都会的な、あるいは知的な、または神秘的な大人の女性が登場するような印象があり、どの作品もスマートな雰囲気を纏っていたように思ってい…

にじいろガーデン (小川糸)

家族の物語であり、人生や恋愛を描いた物語でもあった。 出会いというのは、自分の意志でコントロールできるものではないと思う。友達や恋人なら、誰でもいいわけじゃなく、気の合う相手や好きな人を選んで付き合っているのかもしれないけれど、それにしたっ…

プーと大人になった僕

映画館で公開中のディズニー映画「プーと大人になった僕」を観てきた。 娘がディズニーアニメの「くまのプーさん」が大好きで何度もみていたため、私も一緒に何度となくビデオで鑑賞している。 実写になっても、プーと100エーカーの森の仲間たちの世界は、少…

殿、利息でござる

阿部サダヲ主演の映画「殿、利息でござる」を観た。時代ものであり、人間ドラマであり、コメディでもある映画だった。一粒で三度美味しい、と言ってもいい感じだ。冒頭、イケメン俳優の瑛太が、いきなりコミカルな感じで現れたのが楽しく、なんだか面白そう…

ニライカナイからの手紙

2005年の熊澤尚人監督の映画「ニライカナイからの手紙」を観た。泣けた。こんな仕掛けが隠れているとは思わなかった。私たちが生きているということに、意味があるるのかないのかは誰にも分からないことだと思っていたけれど、それはたとえば、宇宙とは何か…