映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

八日目の蝉

 井上真央永作博美のダブル主演、と言っていいのだろうか、「八日目の蝉」を観た。
 観ている間中、そして見終わってからもしばらくは、いろいろな思いが胸の中で交錯するような映画だった。
 主人公は犯罪者になってしまったけれど、決して悪人ではないではないか、という思い。人を傷つけておきながらそのことに気づこうとしない男への諦念に塗りつぶされた怒り。血の繋がりだけが、親と子を親子にするのではないという気づき。罪のない子どもに悲しい運命が降りかかることのやるせなさ。非情な行動の原因が心の冷たさとは限らないことの切なさ。 
産みの親の気持ちを考えたら絶対に言えないことで、映画だからこその感情だと思うが物語の終盤は逃げ切って欲しいという気持ちが強くなっていった。しかし逃げ切れるはずもなく、主人公は逮捕されてしまう。それでも逮捕の瞬間に叫んだ言葉が、100パーセント、一縷の隙もなく、母親としての言葉であったことに、救いのようなものを感じたのはなぜだろう。
 
 


八日目の蝉 通常版 [DVD]