映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

2020-01-01から1年間の記事一覧

誘拐ラプソディー (荻原浩)

2001年に刊行され、2004年に文庫化された荻原浩の小説「誘拐ラプソディー」を読んだ。 文庫の裏表紙に「笑って泣ける」というようなことが書かれていたが、全くその通りで期待に違わず楽しめた。 犯罪に巻き込まれたり、犯罪が絡んだ小説はよくあるけれど、…

万引き家族

是枝監督の「万引き家族」を観た。 公開当初のテレビスポットを目にしていて、「盗んだのは、絆でした」というコピーを覚えていた。覚えていたからこそ、その意味を私は字面で捉え、おそらくこういう話なのではないかと、粗筋、というにも粗すぎる物語の漠然…

海の見える理髪店 (荻原浩)

荻原浩さんの直木賞受賞作「海の見える理髪店」を読んだ。 短編集であるこの本の表題作「海の見える理髪店」を、以前、ラジオの朗読で耳にしていた。それが、この作家に触れた最初の時で、印象があまりにも鮮烈だった。 主な登場人物は理髪店の店主と客の二…

マチネの終わりに (平野啓一郎)

平野啓一郎著「マチネの終わりに」を読んだ。 この作品は2015年から2016年まで毎日新聞に連載されたもので、昨年、映画化されている。 序文で、主人公の二人に実在のモデルがいることが明かされ、その上で著者は「他人の恋愛ほど退屈なものはないが、彼らの…

コーヒーが冷めないうちに

2018年公開の邦画「コーヒーが冷めないうちに」を観た。 以前、書店で「4回泣ける」と書かれたポップと共に平積みされていたし、テレビスポットも目にしていて、気になっている作品だった。 過去に戻るという状況を題材にした小説や映画はたくさんあるけれど…

ゴールデンスランバー (伊坂幸太郎)

伊坂幸太郎作、ゴールデンスランバーを読んだ。 初出は2007年で、2008年の本屋大賞と第21回山本周五郎賞を受賞している、ということを今回文庫を手にとって初めて知った。 これまで、この作家の作品は映画になったものを観るばかりで、振り返ってみると小説…

カメラを止めるな

2017年公開の映画「カメラを止めるな」を観た。 公開当時、話題になっていたことは知っていたが、監督&俳優養成所の生徒たちによる作品だとは知らず、今回観た後で初めてそれを知った。とはいえ、そのこと自体は私には関係のないことで、知らないまま、変に…

神様 (川上弘美)

川上弘美の短編集「神様」を文庫本で読んだ。 何年も前に、作家の保坂和志氏が「川上弘美の真鶴を読め」と、どこかで発言していたのを見て、真鶴をはじめ、彼女の作品ばかりをある時期読み続けたことがある。何作読んだかは覚えていないけれど、「神様」は今…

キツツキと雨

2012年公開の映画「キツツキと雨」を観た。主演は役所広司と小栗旬。 映画を撮るなどということは、一般人にとっては間違いなく非日常だけれど、映画監督や映画制作を仕事にしている人にとっては日常でもあるだろう。誰かの日常がほかの誰かにとっては非日常…

紙婚式 (山本文緒)

山本文緒の短編集「紙婚式」を読んだ。 初出は22年前だけれど、これを読む限り、結婚生活が夫や妻にもたらす変化というのは、時代によらず、ある程度一貫性がありそうだ。いや、結婚生活が夫や妻に変化をもたらすのではなく、共に暮らすことによって、もとも…

アヒルと鴨のコインロッカー

2007年公開の映画「アヒルと鴨のコインロッカー」を観た。原作は伊坂幸太郎。 巧妙で根の深い仕掛けが、それも物語全体をひっくり返すような大仕掛けがあって、最後にはすべて腑に落ちるけれど、なんて悲しい話なのだろうと思った。悲しみの底に、何かふわふ…