映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

2019-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ふたりの名前 (石田衣良) ~NHKラジオ~

昨日の深夜のNHKラジオで、石田衣良の短編「ふたりの名前」を聞いた。短編という形態だからこそ、この物語の魅力が際立っているように感じた。 幾つかの手痛い別れを経験済みの、大人の恋人同士が、自分のものには自分の名前(イニシャル)を書く、というルー…

乙女ちゃん (佐野洋子)

佐野洋子さんを初めて知ったのは、やはり「100万回生きたねこ 」だった。「100万回生きたねこ」は私にとって再読回数最多の本ではないだろうか。もう30年以上前だけれど、買って帰った数日後には友達に「10回読んで10回泣いた」、とかなんとか言った覚えがあ…

クリック ~もしも昨日が選べたら~

フランク・コラチ監督、アダム・サンドラー主演の2006年のアメリカ映画「クリック」を観た。 「もしも昨日が選べたら」という邦題がついているけれど、過去を変えたりするわけではなく、不快な時間を早送りしたり、過去を見に行ったり、今この瞬間を一時停止…

三年目 (山本周五郎) ~NHK ラジオ文芸館~

深夜のNHKラジオで山本周五郎の短編「三年目」が読まれた。 数多ある周五郎作品のうち、ほんのいくつかを読んだことがあるだけだけれど、いつも結末が深く深く胸に沈み込んでくるような、物語の終わりとともに何が絶対的なものを手渡されるような感じがある…

はじまりへの旅

2016年のアメリカ映画で、日本では2017年公開の「はじまりへの旅」(監督、マット・ロス 主演、ヴィゴ・モーテンセン)を観た。 ツタヤで見つけたとき「普通ってなんだろう」というコピーとカラフルなジャケット(登場人物たちのカラフルな服装)になんとなく引…

空飛ぶタイヤ (池井戸潤)

同じ作家ばかり読んでいないで、たまには毛色の違ったものを、と考えながら図書館の中を歩いていたらこの本が目にとまり、これは大ヒットしたエンターテイメント小説のはず、と思って手に取った。 文庫本としては厚みがあり、しかも上・下巻の二冊に分かれて…

最果てアーケード (小川洋子)

短編集の形をしているけけれど、すべてが一つのアーケードに纏わる話である。と、述べた途端に、いや長編小説として書かれたのではと思えてきた。どちらであろうと、ストーリー性に頼らない小川洋子の世界にまた出会えた。 この作家の描写の前では、筋書きな…

さようなら、コタツ (中島京子)

面白いタイトルだなと思っていた。 2003年にデビューした作家で、この短編集の作品のほとんどが2004年初出となっているから、かなり初期の頃の作品だ。 最初に短い前書きがついていて、短編集だろうと長編だろうと、物語のプロローグとしてではなく、小説に…

たたら侍

2017年公開で錦織良成監督、脚本の「たたら侍」を借りて観た。 全編を通して映像がとても美しく、自然の持つ広大で繊細な霊気、とでも言いたくなるようなものが静かに伝わってきた。そのせいで人間の浅はかさや生きるということのはかなさを感じさせられた気…

her / 世界でひとつの彼女

2013年公開のアメリカ映画「her / 世界でひとつの彼女」を観た。 妻から離婚を迫られている主人公の男性がコンピューターのオペレーティングシステムに、つまりAIに本気で恋をするという物語で、面白かった。考えさせられるという意味で面白かった。 たとえ…

ハート・オブ・ウーマン

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 民放テレビで深夜に放送していた「ハート・オブ・ウーマン」を観た。久しぶりに洋画を観た気がする。テンポ良く物語が展開し、楽しめた。 主人公の男性が女性の考えを読めるようになってしまい、最初は…

佐野洋子の動物ものがたり (佐野洋子)

(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 初版は2018年10月29日、つまり最近だけれど、収録されている6篇のうち5篇は1989年に「図書新聞」に連載されたものとの断り書きがある。連載時のタイトルは「佐野洋子の動物図鑑」。 登場するのは動物ば…