映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

2019-01-01から1年間の記事一覧

アカペラ (山本文緒)

山本文緒の「アカペラ」を読んだ。 表題作を含む中編三作品が収められていて、どれもとても面白かった。 小説を読んだ後、感想をきちんと言葉で表現するのはなかなか難しい。「面白かった」だけで伝わることがあるとしたら、この人は退屈せずに楽しく読んだ…

ワンダー 君は太陽

2018年公開のアメリカ映画「ワンダー 君は太陽」を観た。 子どもが中心の物語なのだけれど、子どもたちに起こる出来事やその生活を通して、大人、子どもという言葉ではくくれない「人」そのものが描かれていたように思う。 日頃、人はみなそれぞれで、一人一…

団欒 (乃南アサ)

乃南アサ著の短編集「団欒」を読んだ。 面白かった。 いろいろな家族がいて、家族ごとにいろいろな事件が起こる。故意の殺人や不慮の殺人も起こるのだが、それに関わる人々の言動がいかにも人間臭く、あり得ないと思えるほど身勝手な家族もいて、所詮人間な…

三度目の殺人

2017年公開の是枝裕和監督作品、「三度目の殺人」を観た。 タイトルに「殺人」とあるように、殺人事件を中心とした話で、是枝監督の他の作品とは少し毛色が違うと言えば言えそうにも思う。 けれどある意味では「そして父になる」や「海よりもまだ深く」に描…

マドンナ (奥田英朗)

奥田英朗の短編集「マドンナ」を読んだ。 どの話も中間管理職の40代サラリーマンが主人公で、どの話も面白かった。 表題作「マドンナ」の中で、何というか、考えさせられた箇所がある。夫婦が言い合いになり、妻が夫に「この独裁者、弱いものいじめ、能力主…

運動靴と赤い金魚

1997年のイラン映画「運動靴と赤い金魚」を観た。 ツタヤでどれを観ようかとDVDをランダムに手に取っては棚に戻していたとき、ふと見ると、ジャケットに「隠れた名作」とあり、気になって借りてきた。イラン映画は初めてで、その意味での好奇心もあったよう…

桜雨 (坂東眞砂子)

坂東眞砂子著「桜雨」を読んだ。 文庫のカバーに、この作品で1996年の島清恋愛文学賞授賞とある。その翌年には別の作品で直木賞を授賞した作家だ。 「桜雨」は、一言で言えば男女の三角関係を綴った物語だった。とはいえ、一人の画家を女性二人が奪い合うの…

オー!ファーザー

2014年公開の映画「オー!ファーザー」を観た。原作は伊坂幸太郎、監督、藤井道人、主演、岡田将生。 DVDのジャケットを読んで、父親が4人いる高校生が主人公と知り、面白そうだなと思って借りてきた。 普段はサスペンスやミステリーより、家族や人生を描い…

ダージリン急行

2008年に日本公開のアメリカ映画「ダージリン急行」を観た。 ツタヤで手に取ったとき、DVDのジャケットに、~三兄弟がインドを旅する~ とあったので、一瞬インド映画かと思ったけれど、インドが舞台のアメリカ映画だった。 疎遠になっていた三兄弟が、長男の…

時雨のあと (藤沢周平)

藤沢周平の「時雨のあと」を読んだ。 以前、保坂和志に傾倒して彼の小説ばかり読んでいた頃に、保坂氏の「藤沢周平を読め」という言葉をどこかで見たか聞いたかしたことがあり、それ以来ずっと気になっている作家だった。とはいえ今回手に取ってみて初めて、…

阪急電車

2011年公開の三宅喜重監督作品「阪急電車」を観た。 冒頭に主人公のモノローグで「人は皆、それぞれの思いを抱えて生きている」というようなことが語られる。その言葉には聞き終わらないうちから、二度三度と頷いた。誰にだって不安や不満や悩み、そういうも…

ツナグ (辻村深月)

辻村深月の「ツナグ」を読んだ。 この作家の直木賞受賞作「鍵のない夢を見る」を数年前に読んでいて、物語の意外な展開に引き込まれながら、存分に楽しんだ記憶がある。 「ツナグ」も、意外な展開というか周到な真実というか、読み進めば進むほど読者を引き…

女たちのジハード(篠田節子)

1997年の直木賞受賞作品、篠田節子の「女たちのジハード」を読んだ。 読み始めてすぐ、目の前に現れたのは、90年代のバブルが弾けた頃のOLたち。OLという言葉だけで、すでに時代が透けて見えるようだ。そうか、20年も前の話なんだな、と感じたときは、ほんの…

永遠のとなり (白石一文)

白石一文著「永遠のとなり」を読んだ。 この作家の10冊目の本で2007年に刊行されている、と解説にあった。同じく解説に「人生の意味を真正面から問いかける思索的な作風」とあり、私自身、物事に意味付けをしたがる性分のせいか、そうした作風がとてもしっく…

友だちのパパが好き

2015年公開の山内ケンジ監督作品「友だちのパパが好き」を観た。 様々な感じ方ができそうな、様々な側面を持つた映画だった。 正直さ、素直さと捉えるか、自分勝手と捉えるか、非常識と見るか自由と見るか、純愛なのか狂気なのか、どれもが紙一重、というよ…

長いお別れ (中島京子)

中島京子の「長いお別れ」を読んだ。 アルツハイマー型認知症を発症した父親が人生を閉じるまでの10年間を綴った物語で、父親を支える家族の物語だった。と言っても、病気に焦点が当たっている感じはなく、オムツや排泄物が登場しても、家族の大変さが悲愴感…

キラキラ共和国 (小川糸)

小川糸の「キラキラ共和国」を読んだ。「ツバキ文具店」の続編となるこの作品、図書館に予約して順番が回ってくるまでに、およそ一年かかったということは、今なお相当な人気のようだ。 ツバキ文具店の店主である主人公、鳩子の入籍の報告から始まり、妻とな…

リトル ミス サンシャイン

2006年のアメリカ映画「リトル ミス サンシャイン」を観た。 10才の少しポッチャリした女の子が、家族の応援のもと、美少女コンテストに優勝を目指して出場するという話で、コンテスト当日、家族みんなで会場に向かうのだが、その道中に様々なことが家族それ…

東京タワー / オカンとボクと、時々オトン (リリー・フランキー)

2005年初版のリリー・フランキー作「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」を読んだ。 筆者が自分の体験を振り返って書いたという小説で、具体的な出来事を通して、お母さんへの想いはもちろん、リリーさんの中の広大な宇宙が見事に描かれていたように思…

寝ずの番 (中島らも)

中島らもの短編集「寝ずの番」を読んだ。 最初に「寝ずの番」が1から3まで、三部作で登場するのだけれど、咄家の話で、「1」で師匠が死に、「2」で兄弟子が死に「3」で師匠の奥さんが死んだという話だったので、近しい人がそんなにポンポン亡くなるなん…

探偵はBARにいる

大泉洋主演の「探偵はBARにいる」を観た。 以前はどんな物語であれ、人が殴り合うようなシーンはあまり好きではなかったのに、この映画の中の探偵とヤクザのやり合う場面には、どこか爽快さすら感じたのは、松田龍平演じる主人公の相棒が、気持ちいいほど強…

エイジ (重松清)

重松清著の「エイジ」を読んだ。 中学2年生の男子が主人公の物語で、「人が子どもから大人へと成長する過程を描いている」のかもしれないけれど、読んでいる間は、そんなふうにはまるで感じていなかった。読後に内容を振り返れば、そういうことになるけれど…

おと な  り

岡田準一と麻生久美子が共演した 「おと な り」を観た。 映像が美しい映画だった。桜の花びらに投写しているかのような、儚げな美しさがあって、他の映画とは映像の質感が違っていた。作品全体に、なんだか童話のような雰囲気があったように思う。 ストーリ…

ショートカット (柴崎友香)

柴崎友香の「ショートカット」を読んだ。この作家の作品は、数年前に読んだ「春の庭」に続いて二作目になる。 「春の庭」を読んだ時には私が気づかなかった柴崎さんの持ち味、のようなものが、今回はうっすらとかもしれないけれど見えたように感じている。 …

森山中教習所

賀来賢人と野村周平が共演した2016年公開の映画「森山中教習所」を観た。 ツタヤでタイトルを見るまで、この作品の存在も原作のコミックの存在も知らなかった。ちょうど家族が免許合宿中だから、なんとなく引っかかって、そのくらい何気なく借りてきたのだけ…

まゆみのマーチ (重松清)

この作家の自選短編集・男子編「卒業ホームラン」に続き、自選短編集・女子編「まゆみのマーチ」を読んだ。 「卒業ホームラン」の読後に述べた通り、重松清作品の温かさや、人の心の、というか人そのもののというか、掘り下げ方にはやはり引き込まれるものが…

卒業ホームラン (重松清)

重松清の短編集「卒業ホームラン」を読んだ。 この作家の作品はデビュー作の「ビフォア・ラン」、直木賞を受賞した「ビタミンF」のほか「流星ワゴン」「きみの友だち」を読んだことごある。どの作品もいつも、文章そのものが、というのか、作品全体がと言っ…

百円の恋

安藤サクラと新井浩文が共演した2014年公開の映画「百円の恋」を観た。 タイトルをみると、恋愛ものに思えるけれど、ラブストーリーという枠には収まらない要素が、映画全体に満ちあふれていた。 恋愛も家族愛も夢も仕事も無気力も怠惰も、どれか一つが人生…

ギルバートグレイプ

レオナルド・ディカプリオとジョニー・デップが共演した1993年のアメリカ映画「ギルバートグレイプ」を観た。 タイトルに覚えがあり、昔、と言えるくらい以前に誰かが見るべき映画だと言っていたのを思い出してかりてきた。特に配役情報など気にせず見始めた…

ブルージャスミン

2013年のウディ・アレン監督のアメリカ映画「ブルージャスミン」を観た。 主人公は、ジャスミンに違いないのだけれど、ジャスミンとその妹、の二人の対比がとても色濃く、妹もまた主人公だった気がする。 着るもの食べるもの使うもの、すべて高級品に囲まれ…