映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

星を掬う (町田そのこ)

 町田そのこ著「星を救う」を読んだ。

 親子や家族の物語が、人生の物語でもあるのは、一人一人の生き方を描かなければ親子や家族の関係を描き出すことはできないからなのだろう。

 「母親」という存在も、母親である前にひとりの人間なのだ、ということがこの本には描かれていた。
 これは当然のことのように思えるけれど、一方で「子どもを産んだ女性は母親であることを最優先にすべき」というような考え方もまた、当たり前のように有りはしないだろうか。考え方と呼べるほど大袈裟なものでなく、そのような雰囲気がある、と言った方がいいかもしれない。そして、考え方であれば、それを選ぶかどうかは自分次第のところがあるが、雰囲気というものは選ぶ以前にそこにあったりする。

 もちろん子どもは、食べるものも着るものも全て親に与えてもらわなければ生きていけない。子どもにとって、子どもである自分のことを最優先に考えてもらうことは、時として必要なことだろう。
 しかし、どのような態度が「子どもを最優先にしている」といえるのか、答えはないように思う。言い換えれば、親の数だけ答えがあるのかもしれない。子どもが歓迎できる答えを持つ親もいれば、あまり歓迎されない答えを持つ親もいるだろうし、子どもの受けとめ方も一人一人違うはずだ。さらに言えば、親から最優先どころか少しも優先してもらえないことが日常となる子どもも世の中にはいるけれど、必ずしもそれが、その子の不利益になるとは言えない気がする。無責任にこんなことを述べるのは、親から最優先に扱われたことが裏目に出る場合もあるだろうと思うからなのだが、私の乏しい想像力では確かなことなど言えない。

 明らかなのは、人は、自分以外誰も歩けなかった人生を歩くのだ、ということだろう。


 この本を読んで、自分の人生を愛おしく感じるということが、精いっぱい生きる、ということなのかもしれない、と思った。