映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

青年のお礼

NHKラジオをつけていたら朗読のコーナーがあり、乃南アサの「青年のお礼」という短編を聞いた。
朗読を聞くという形で小説を鑑賞するのも、味わい深いものがある。聞き心地の良さはアナウンサーという語りのプロが読み聞かせてくれているからだとは思うが、自分以外のだれかの声で物語が伝わってくると、ストーリーをより客観的に捉えられる気がする。場面の情景が大きなスクリーンに映し出されるかのように胸に入ってくるから不思議だ。
「青年のお礼」は、とてつもない悲しみを背負ったふたりの人物が旅先で出会う話だった。しかし、出会うというほど大げさな感じではなく、ほんの1日、いや数時間、或いは一瞬かもしれない、お互いの悲しみを共有し、そのことが前向きに生きるための手助けに、ほんの少しだけなったのだと思える話で、さわやかな印象が残った。