映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

貴婦人A の蘇生

一昨日、小川洋子著「貴婦人A の蘇生」を読み終わった。
小川洋子の描く世界は、いつも穏やかで優しく感じるが、それは描かれている世界そのものが穏やかで優しいから、ではないのかもしれないと気づいた。
どこかにある日常を描くとき、作者はそれを表現するために、一度その日常を受けとめなければならず、その受けとめ方が穏やかで優しいために、描かれた世界が穏やかで優しいものに映るのだろう。
博士の愛した数式」で小川洋子という作家を知って以来、いくつかの作品を読んできた。どれも緻密な優しさで満ちていて大好きだが、長編では「猫を抱いて象と泳ぐ」と「ブラフマンの埋葬」が気に入りだ。小川洋子作品はいつもそうなのだか、この「貴婦人A の蘇生」も読み終えてしまうのがもったいなく感じる物語だった。

貴婦人Aの蘇生 (朝日文庫)

貴婦人Aの蘇生 (朝日文庫)