2017年公開の映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟 」を観た。
この作品では手紙が大切なモチーフになっていて、32年という時空を越えて手紙のやり取りが行われる。
そして、そのやり取りには2つのパターンがあり、過去から来た悩み相談の手紙に対して、その32年後を生きる若者が、相談者にとっての未来をある程度知った上でアドバイスを与える、という場合がひとつ。もうひとつは、それまで悩み相談に答えてきた店主が、死の間際に、相談者たちのその後の人生について書かれた未来からの手紙を受けとる、というものだ。
前者にはどこかSFの匂いを感じるのに対して、後者にはノスタルジックな印象が残った。途中、人の運命なんて簡単に変わるものではない、というようなことを主人公の一人が、口にする。確かに、手紙が人の運命を左右することはないかもしれないけれど、手紙が人の感情を左右することはきっとあるだろう。
ふと気づいたのだが、学校行事などで、未来の自分に手紙を書く、ということはあっても、過去の自分に手紙を書くという機会はないように思う。過去を振り返るより未来について考える方が前向きに思えるかもしれないけれど、前向きに生きるためには、自を信じる気持ちが必要だし、それを持つためには過去の自分を肯定することが必要な気がする。
脈絡のない文章になったが、こ映画は、東野圭吾の小説が原作となっている。東野圭吾作品の映画といえば、「容疑者Xの献身」が忘れられない。世の中に傑作と呼ばれる作品は幾つもあるけれど、観る側一人ひとりにとっての傑作は、そう多くはないだろう。とはいえ映画を楽しむ者にとっては、傑作も秀作も大作も、みな愛すべき作品である。