小川洋子
ことりとその歌声を愛してやまない兄弟の物語だった。 兄は10歳のときに、弟以外の誰にも理解できない言葉しか話さなくなる。そして、両親が亡くなったあとは、兄が52歳で亡くなるまで兄弟二人きりで暮らすのだが、慎ましく内向的な生活の中で、小鳥の存在だ…
今考えてみると、この作家の作品には、舞台が一体どこなのか、はっきりとは判らないものが多かったように思う。 この「沈黙博物館」もそうだった。どこかの村ではあるのだが、日本なのか外国なのか、どちらでもあるようでどちらでもないような、不思議な空間…
一昨日、小川洋子著「貴婦人A の蘇生」を読み終わった。 小川洋子の描く世界は、いつも穏やかで優しく感じるが、それは描かれている世界そのものが穏やかで優しいから、ではないのかもしれないと気づいた。 どこかにある日常を描くとき、作者はそれを表現す…