映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

さいはてにて ~やさしい香りと待ちながら~

 2015年公開、永作博美主演の映画「さいはてにて」をみた。
 主人公は行方不明の父親の帰りを待つために、一人小さな漁港の小屋に移り住む。そこで近所に暮らす母子家庭の子どもたちと関わっていくのだが、子どもたちの母親は仕事のためとはいえ不在になりがちだった。こう文字にすると、もの悲しく寂しい物語のようだけれど、そして確かに寂しさも悲しみもそこにはあるのだけれど、それが強調されるわけではなく、それらと同時に存在している人の強さや温かさが描かれた映画だった。
 「悲しみは愛からしか生まれない。悲しみほど愛を生きた証はない」という、誰かの言葉を思い出した。(批評家のw氏だったろうか)
 悲しみも愛もひとつとして同じものはなく様々だろうし、様々なのに比べることはできないわけで、その孤立性こそが個々の悲しみや愛を唯一無二のものにするのだろう、ということも感じる。
 舞台となった能登半島の景色の美しさにも心引かれた。なんというか、これほど透度の高い風景を初めて見た、という気がする。いつか訪れてみたいと思っている。