映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

りんごの花咲くころ (石坂洋次郎)

本棚の片隅にひっそりと収まっていた本を読んでみた。
初版は、昭和50年12月30日
そして、昭和54年9月20日 7版発行、とある。
おそらく30年以上前に購入した文庫本だるう。タイトルに見覚えはなく、自分で買ったのかどうか判然としないが、忘れているだけで自分で買ったのだろう。
今の文庫本よをも字が小さく、どのページもすっかり変色していたが、収録されている5つの短編は、どれも密度の濃い小説だった。小説に密度の濃い薄いがあるのかどうか分からないが、手短にこの本の印象を述べようとしたら、そんな言葉になった。
表題作の「りんごの花咲くころ」は戦中戦後の話て、夫が戦死し、形見を持って訪ねてきた夫の部下と残された妻が、家族ぐるみで交流するうちに心を通わせていき、やがて夫婦になるのだが、何年か前に映画になった「永遠の0」を思い出させた。実際、戦争のために引き裂かれた夫婦はいくらでもいて、その数だけ家族の物語もあるのだろう。
国や世界の歴史からみたら、人間の一生はほんの一瞬で、それをのみ込みなから変化していく「時代」こそが生き物のように思えてくる。  
林檎の花咲くころ (1956年) (角川小説新書)