映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

百万円と苦虫女

 2008年公開で蒼井優主演の「百万円と苦虫女」を観た。 
 DVDのジャケット裏にある粗筋を読み、アルバイトで百万円を貯めて家を出た女の子が、貯金が百万円になると次の街に引っ越す、ということを繰り返す話なのだなと理解し、それが明るく楽しく軽快な旅であるような予想を、私は無意識のうちにしていたようだ。その予想が全く外れたわけではないけれど、これほどまでに心に深く染み入る映画になるとは思っていなかった。
 じわじわとゆっくり静かに染み入ったのではなく、ガツンとくる瞬間があって、そこから映画の中のいろいろなエピソードが、くっきりとした色を持ってなだれ込んできた気がする。
 ガツンときたのは、自分探しの旅をしているのかと尋ねられた主人公が、それに答える場面だ。この主人公と私は親子のような年齢差だが、私は未だに自分探しをしているようなフシがある。そして私の自分探しは、「私の人生こんなはずではない」という自分への買い被りや、今の自分の全面否定を土台にしていたのだ、と気づかされた。出発点がそれでは、いくら探したところで自分など見つかるはずもない。そもそも自分とは探すようなものではなかったのだ(私にとっては)と教えられ、今の自分を自分なりにしっかりと見つめ、あるがままを受け入れようと思えた。
 12年も前に公開されていた映画を今さら観たわけだけれど、見ないまま人生を終えなくて良かったと感じている。

百万円と苦虫女 [DVD]

百万円と苦虫女 [DVD]

  • 発売日: 2009/01/30
  • メディア: DVD