安藤サクラと新井浩文が共演した2014年公開の映画「百円の恋」を観た。
タイトルをみると、恋愛ものに思えるけれど、ラブストーリーという枠には収まらない要素が、映画全体に満ちあふれていた。
恋愛も家族愛も夢も仕事も無気力も怠惰も、どれか一つが人生の全てになることはなく、それらの幾つかが、或いは全てが呼応しあって、人ひとりの人生が進んでいくのだと感じた。こうして言葉にすると当たり前のことのようだけれど、たとえば「結婚はこりごり、これからは仕事に生きよう」などと思ったところで、仕事が生活のすべてには、きっとなり得ないのだ。よく「何かを手に入れるには、何かを捨てなければならない」と言うけれど、同じ意味て「何かを捨てたいなら、何かを引き受けなければならない」とも言えるのだろう。
映画というものが、言葉にできない様々なもの、あえて言うなら自分や誰かや世の中に対する歯痒さやら疑問やら欲望やらを表現するものだとしたら、「百円の恋」は存分に表現していた。こういう映画をもっと観たいと思う。