映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

均ちゃんの失踪 (中島京子)

失踪した均ちゃんの家に泥棒が入った、という状況から始まる表題作を筆頭に、「のれそれ」「彼と終わりにするならば」「お祭りまで」「出発ロビー」と四つの短編が続くのだが、登場人物と時間の流れを共有していて、全体で一つの作品になっている。
最初から面白かったけれど、「お祭りまで」で失踪した均ちゃんがいきなり登場したのには意表をつかれた。なぜ失踪したかの種明かしにもなっていて、思ってもみない理由に、静かに興奮しながら読んだ。
面白い本だった。面白かったし、何だかわからないけれど、すごくよかった。
とてもとても終わりが良くて、読後感がよくて、もう一度読みたいと思い、でも時間があまりなかったので、最後の「出発ロビー」だけを再読した。やはり爽快感が残った。何と言えばいいか、日頃なかなか受け入れ切れずにいるダメな自分や嫌な自分を、すんなり許してくれるような小説だったのかもしれない。なぜそう感じるのかは全く説明できなくて、自分でもそんな風に感じるなんて唐突だと思うけれど、とにかく、そんな気がしたのだ。小説を読んでこんな気持ちになったのは初めてだ。この先、二度三度と読み直す本になりそうな気がする。
      
均ちゃんの失踪