映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

さようなら、コタツ (中島京子)

 面白いタイトルだなと思っていた。
 2003年にデビューした作家で、この短編集の作品のほとんどが2004年初出となっているから、かなり初期の頃の作品だ。
 最初に短い前書きがついていて、短編集だろうと長編だろうと、物語のプロローグとしてではなく、小説に前書きがついているというのはめずらしく、これもまた面白かった。
 小説を読むとき、読者は非日常を体験する。体験が言い過ぎなら、疑似体験、だろうか。もっと譲って、垣間見る、でもいいけれど、物語の中に描かれる日常や、ハプニングは、私にとってはどれも非日常である。その非日常に触れたあとで思う。日常は変化する。代わり映えのしない毎日を過ごしていたとしても、いつか必ず変化する。そして変化のスパンは意外と短い。自覚なく変化していることもありそうに思う。望んでの変化もあるだろうけれど、望まぬ変化もやってくる。その時にどう折り合いをつけるか、そんなことを知らず知らずのうちに小説に教えてもらっているかもしれない。
 
さようなら、コタツ