映画と本と言葉たち

観た映画や読んだ本についての一人よがりの感想などを、勝手気ままに綴っています。

ショートカット (柴崎友香)

 柴崎友香の「ショートカット」を読んだ。
この作家の作品は、数年前に読んだ「春の庭」に続いて二作目になる。
 「春の庭」を読んだ時には私が気づかなかった柴崎さんの持ち味、のようなものが、今回はうっすらとかもしれないけれど見えたように感じている。
 普段、たとえば電車に乗っているときなどに、「お互い認識できなくても、この車両に、昔旅先ですれ違った人が乗っていたりするかもしれない」などと思うことがよくあって、それは感傷とは違う、単なる物の(世界の)見方として表れる考えなのだけれど、だから何、と言われたら答えようのない、宙ぶらりんな思考だ。でもその宙ぶらりんな思考も、実はベクトルを持っているのだと、この小説は示しているような気がする。さらに、この小説には人の心理や感情といったものを、世界を構成する物体として捉えている感じがあって、そこがなんだか新鮮だった。
 自分の気持ちを「物」のように眺めて、少し距離をおくことができれば、見える世界がぐんと広がったり、180度変わったりするかもしれない。これからは私も、時々は自分の気持ちや感情と、そんな風に接してみたいと思う。


ショートカット