辻村深月の「ツナグ」を読んだ。
この作家の直木賞受賞作「鍵のない夢を見る」を数年前に読んでいて、物語の意外な展開に引き込まれながら、存分に楽しんだ記憶がある。
「ツナグ」も、意外な展開というか周到な真実というか、読み進めば進むほど読者を引き付けるストーリーが用意されていて、最後には全てが腑に落ちるよう、惜しげなく種明かしをしてくれた。そうした緻密な構成に脱帽しつつ、その中で見え隠れする人の心の機微こそが、この本の魅力になっているように感じている。
この物語の中で、登場人物たちは死んでしまった誰かにもう一度会いたいと心底願い、その願いを叶えるけれど、なぜ会いたかったのかを考えると、確かめたいことがあったから、だと思われる。そしてその確かめたいことは、相手が死んでしまったために沸き起こったことでなく、生きているときからあったことだった。
「死」は、取り消しのきかない、取り返しのつかない出来事だ。少なくとも生きている者にとっては。それはなぜだろうと考えると、「生きていること」「産まれてきたこと」が、「死」と同様に取り返しのつかないことであり、人は皆、取り消しのきかない毎日を生きているのだと思わされる。
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